未来をつなぐ懸け橋に
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Business Story
M&A支援ストーリー
M&Aで人とビジネスをつなぎ、
新たな価値創造と地域活性化を。
それは、雑談の中での
何気ない問いかけから
始まった。
入行以来、一貫して法人営業の道を歩んできた塙。現在は本店営業部で部下30名を率いる課長として、法人のお客さま向けに外訪営業を行う営業1課~4課と融資管理を行う融資係を統括している。営業グループ全体のマネジメントを業務の中心としながら、塙はプレイングマネージャーとして自らもお客さまを担当しているという。
その中で、他行より後発の取り引きだが、定期的な提案や情報提供で関係性を深め、取引が拡大した土木建設業を営むお客さまがいた。塙に言わせれば「社長とウマが合った」ということだが、何気ない雑談の中で社長が塙に相談した話が、後にM&Aを通じたビジネス支援に繋がっていくことになる。
「そのお客さまには、新たに取引を開始した大手メーカーがいて、県内の製造工場で発生する改修工事等を請け負っていました。また、その大手メーカーは製造過程で発生する産業廃棄物の収集運搬を別の会社に発注していたのですが、業者の入替を検討している状況でした。そんな中、私のお客さまにこの業務の発注の打診があったのです。しかしお客さまはこの業務を請け負うために必要な運送業の許可を持っておらず、一から取得をするには手間もコストも掛かる状況。社長としては、小規模な運送会社や、許認可を取得済で休業状態の会社があれば、M&Aを検討したい、という話でした。つまり、新たに産業廃棄物の収集運搬事業をはじめるにあたって、運送会社の許認可取得のため、運送会社買収を考えていたのです」(塙)
その話を受け、塙は頭を巡らせた。事業売却を打診できる企業はどこか。答えを出すのに多くの時間は要らなかった。

M&Aの成立によって、
将来的なビジネス
拡大の契機に。
実は塙が担当するお客さまの中に、筑波銀行がメインバンクを務める中古のトラック販売会社があった。これまで、融資による支援の他に、取引先紹介を通じた販路支援などを継続的に行ってきた関係性の深いお客さまだ。この中古トラック販売会社は、業務拡大のためにM&Aで数年前に運送会社を取得したものの、当初描いていた本業の支えとはならず、現状では本業であるトラック販売事業における回送部門を担っているのみとなっていた。あえて別会社とする必要性があまりないことから、事業整理のため株式譲渡を検討しているとの考えを塙は以前からつかんでいたのだった。
「この情報は買い手側である土木建設業の社長の話を聞く前から、中古トラック販売会社の社長が折りに触れて口にされていた話です。雑談程度に終わっていたものの、もし何らかの形でお手伝いできる機会があれば支援をしたいと考えていました。そうした中、土木建設業のお客さまから運送会社買収の話があり、両社間のマッチングをスタートすることにしたのです。ただ、案件規模としては比較的小さく、スモールM&Aになることが予想できました。しかし、両社とも当行にとっては重要なお客さまですし、中長期的な目線で考えれば本件をきっかけとしてさらに多角的に当行との取引が発展していくのではないか、そう判断しました」(塙)
さらに、両社は通常の商取引相手としても親和性が高い業種同士でもあり、M&Aを契機としてお客さま同士の取引がスタートし本業支援の面でも貢献できるのではないか。たとえ規模は小さくとも、この案件を成立させることがきっと「未来への懸け橋」につながる、その思いから塙は動き出した。

利益相反を排除し、
いかに両社の着地点を
見出していくか。
塙は早速、本案件について本部に概要を打診した。本部からのアドバイスによって、当行のシンクタンクである筑波総研を活用したスキームで案件の成立を目指す形となり、塙と筑波総研の担当者の2名で具体的に案件を進めていくこととなった。加えて買い手・売り手双方の顧問税理士に対しても、組成段階で両社の意思共有と筑波銀行が仲介に入ることを伝え、第三者的な目線での指導・助言を依頼した。こうしてM&Aのプロジェクトはスタートした。しかし、課題は少なくなかった・・・。
「簡易的な財務精査を踏まえて、双方の希望価格がある程度妥結可能な水準まですり合わせを行い、M&Aの組成報酬を含めた双方費用の概算提示を行うなど、両社の着地点を見出していきました。さらに、お互いのメリット・デメリットを洗い出して、M&Aスキームを提案し、ご納得いただく作業を続けました。案件規模は小さいとはいえ成立までには決算・借入金の清算等のタイミングもあり、要した時間は実に一年超となりました。一番のハードルは、両社ともに当行のお客さまであるため、利益相反関係に捉えられないよう注意を払う必要があったことです。その課題には、別会社である筑波総研が中立的な立場で介在すること、両社企業の顧問税理士に適宜助言をいただくことで、譲渡企業・譲受企業どちらの利益も棄損していないことを担保しました。また、価格交渉も決してスムーズに進んだわけではありません。購入する運送会社がどのような状態であるのか。つまり、負債や資産をどのくらい保有しているのか。これらはすべて清算した後に購入することが買い手側の意向でした。その際の適切な価格を検討し、費用面・条件面の合意形成を図っていきました」(塙)

M&Aによる
事業承継の支援。
「筑波の結び目」の創設。
塙と筑波総研の担当者の奮闘により、株式譲渡によるM&Aは成立した。筑波銀行のシンクタンクである筑波総研と一体化して業務遂行にあたっているのが、本部のビジネスソリューション部である。その中で融資案件以外の、販路拡大支援、人材紹介、そして事業承継・M&Aを担うのが、上原が室長を務めるリレバン推進室だ。
「私たちは通常、各営業店からもたらされた情報や支援要請に応じて動き出します。特に近年は事業継続に不安を抱える中小企業のお客さまの課題への対応が増加し、その解決のためにM&Aをサポートする案件が増えています。中小企業のお客さまは昔とは異なり、後継者不在のケースが非常に増加しています。こうした状況に対して、M&Aによって廃業や業況低迷する企業を減少させ、地元経済の活性化につなげていくのが私たちのミッションです。ただ、売却という手法に対してネガティブなイメージを持つ経営者さまも少なくありません。M&Aは決してマイナスでなくプラスであること、そしてお客さまが抱えている潜在的なニーズをつかみ背中を押してあげることも私たちの役割だと思っています」(上原)
さらに、筑波銀行は中小零細事業者の事業承継への取り組みを、M&Aによってワンストップで支援することを目的として、地元応援型M&Aサービス「筑波の結び目」を創設した。事業承継・M&Aの取り組みは、上原率いるビジネスソリューション部を中心にさらに加速している。塙自身も、ビジネスソリューション部や筑波総研と連携・協働し、M&Aによる事業承継支援の取り組みを、本店営業部全体に拡大させていきたいと考えている。

記録より記憶に残る
担当者に。
地域になくてならない
銀行へ。
今回の取り組みはスモールM&Aではあるが、M&Aを実行した意義は決して小さくない。
「大型のM&Aは、M&A専業会社や投資銀行が担うケースが多いですが、彼らの目的は案件の成約・クローズです。私たちも、もちろんその点は同様なのですが、決定的に異なるのが、案件成立後も私たちはお客さまとお付き合いしていくということです。つまり継続的にお客さまを支援していくのが銀行の特徴で、そこで培われる信頼関係が次のビジネスにつながっていきます。今回の案件では、人のつながりの大切さや、案件内容の大小に関わらず真摯に対応することの重要性に改めて気付かされました。そのスタンスが、お客さまにとって忘れられない担当者になることにつながっていくと思っています。私は、記録より記憶に残る担当者を目指します」(塙)
銀行はお客さまの資金ニーズに応え、必要とされる資金を供給する「融資」がその役割である。もちろん、本業とも言えるその役割は重要な取り組みであるが、これからの銀行がなすべきことは、お客さまの多様な課題に向き合い、最適なソリューションを提供していくことである。近年それは一層求められつつある。たとえば、周辺事業の拡大や事業再編、販路支援等の潜在的・顕在的ニーズに対して、筑波銀行としていかにフレキシブルに対応することができるか。今回の塙の取り組みも、その試みの一つだった。こうした取り組みは、未来にどんなものを生み出していくのだろうか。
「地域・社会貢献としては、今回のマッチングによって生まれる新たな商取引と、機会損失の回避によるお客さまの事業・収益機会の最大化が結果として得られると思います。それが、お客さまの価値創造につながり、ひいては地域活性化にも結び付くと考えています。今後もお客さま同士をつなぎ合わせることで、地域経済の発展、お客さまの成長に対して一層貢献していきたい。そして当行が掲げる「First Call Bank」を確実に体現し、地域にもお客さまにも信頼され頼りにされる銀行、そして何よりも行員一人ひとりがやりがいと自信をもって働ける、地域になくてはならない銀行を一層目指していきたいと思っています」(塙)
