第88回「茨城県内企業経営動向調査」(2025年9月調査)
日米関税交渉合意によって製造業で業況が改善するも、非製造業で業況改善の動きが一服
筑波銀行(頭取 生田 雅彦)のシンクタンクである筑波総研 株式会社(社長 瀬尾 達朗)は、茨城県内企業経営動向調査(調査基準2025年9月)を実施しましたので、その結果を公表いたします。
1.自社業況判断DIは全産業で前回調査から0.5ポイント悪化し、「悪化」超幅が拡大
2025年7~9月の自社業況判断DI(「好転」回答割合-「悪化」回答割合)は、全産業で▲4.5と前回調査実績から0.5ポイント悪化した。
業種別にみると、製造業は▲9.8と同5.1ポイント改善した。その他の製造業、食料品、電気機械等が悪化したものの、化学・プラスチック、鉄鋼・非鉄金属、金属製品等が改善した。非製造業は▲1.4と同3.2ポイント悪化した。小売業、建設業、運輸業等が改善したものの、卸売業、サービス業他、情報通信業等が悪化した。
製造業は3四半期振りに業況が改善した。今回調査は日米関税交渉合意後初めての調査となった。前回調査ではトランプ関税による先行き不透明感の高まりから、受注が減少し販売価格の低下もみられたことで業況が悪化した。その後、日米関税交渉合意によって不透明感が後退したことで、素材業種と加工業種で受注が回復し販売価格への転嫁も進展し業況が改善した。一方、食料品では値上げによる販売価格への転嫁が進んでいるものの、需要の減少から受注と生産が減少したことで業況が悪化した。
非製造業は2四半期振りに業況が悪化した。景気が緩やかに回復している中で業況判断DIは高水準にある一方、物価高が企業・消費者マインドへのマイナスの影響となっていることで業況改善の動きが一服した。卸売業では価格転嫁が進んでいるものの、売上が減少し在庫が積みあがったことで業況が悪化した。
先行き2025年10~12月の自社業況判断DIは、製造業で今回調査実績から改善、非製造業で悪化する見通しである。高水準の賃上げが続く中で、個人消費の回復に伴い、景気は緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、日米関税交渉は合意したものの、影響は続くことが予想される。企業からは、「業況判断は難しい。カギはトランプ政権の関税措置」(輸送用機械)といった影響を懸念する声が上がっている。
また、トランプ政権の関税政策における他国・地域への個別の関税引き上げによる世界経済の減速リスク、物価上昇持続による消費者マインド悪化リスク、中東・ウクライナを中心とした地政学リスク、など企業を取り巻く環境の先行き不透明感が強い中で企業は先行き慎重にみている。
2.設備投資を実施した企業の割合は、全産業で前回調査から3.0ポイント上昇
2025年7~9月に設備投資を実施した企業の割合は、全産業で29.7%と前回調査実績(26.7%)に比べ3.0ポイント上昇した。業種別にみると、製造業は同3.6ポイント上昇(32.2%→35.8%)、非製造業は同2.4ポイント上昇(23.8%→26.2%)した。
なお、前年同期(2024年7~9月)と比べると、全産業は1.4ポイント上昇(28.3%→29.7%)した。製造業は同3.4ポイント上昇(32.4%→35.8%)、非製造業は同0.4ポイント上昇(25.8%→26.2%)した。
先行き、2025年10~12月に設備投資を計画している企業の割合は、全産業で24.6%と今回調査実績に比べ5.1ポイント低下する見通しである。
3.調査の概要
対象期間 |
2025年7~9月実績、2025年10~12月見通し |
調査企業数 |
茨城県内主要企業732先 |
回答企業数 |
337先 (製造業:123先、非製造業:214先) |
調査方法 |
郵送による記名式アンケート |
DIについて |
DI(Diffusion Index)は、前年同期と比較して「好転」・「増加」・「上昇」・「過剰」と回答する企業の割合から「悪化」・「減少」・「低下」・「不足」と回答する企業の割合を差し引いて算出している。単位は%ポイントであるが、本文中では単位を省いて表記している。 |
以 上
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