第87回「茨城県内企業経営動向調査」(2025年6月調査)
採算性の悪化で製造業の業況が悪化するも、景気回復に伴い非製造業で業況が改善
筑波銀行(頭取 生田 雅彦)のシンクタンクである筑波総研 株式会社(社長 瀬尾 達朗)は、茨城県内企業経営動向調査(調査基準2025年6月)を実施しましたので、その結果を公表いたします。
1.自社業況判断DIは全産業で前回調査から3.3ポイント改善し、「悪化」超幅が縮小
2025年4~6月の自社業況判断DI(「好転」回答割合-「悪化」回答割合)は、全産業で▲4.0と前回調査実績から3.3ポイント改善した。
業種別にみると、製造業は▲14.9と同7.2ポイント悪化した。電気機械、食料品、その他の製造業等が改善したものの、鉄鋼・非鉄金属、化学・プラスチック、金属製品等が悪化した。非製造業は1.8と同8.8ポイント改善した。サービス業他、不動産業等が悪化したものの、建設業、卸売業、飲食・宿泊業等が改善した。
製造業は、2四半期連続で業況が悪化した。今回調査は4月のトランプ関税発表後初めての調査であり、輸出に関わっている企業では、関税を要因に発注を見送る取引先が増えたことで売上・受注の減少がみられる。こうした中、販売価格への下押し圧力が強まっていることに加え、原材料費と人件費が高止まりしていることで採算性が悪化し業況が悪化した。
非製造業は、2四半期振りに業況が改善した。食料品の相次ぐ値上げを中心とする物価高を背景に消費者マインドが悪化していることから、家計消費に関連が強い小売業で業況判断DIが低位で推移した。一方、景気が緩やかに回復している中で、売上高が増加した卸売業や飲食・宿泊業、建設業等で業況が改善した。
先行き2025年7~9月の自社業況判断DIは、製造業は今回調査実績から改善、非製造業は悪化する見通しである。
高水準の賃上げが続く中で、個人消費の回復に伴い、景気は緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、トランプ関税については、輸出関連企業を除けば直接的な影響を受けている企業は現状では限られているものの、トランプ関税で業況が悪化した取引先からの投資の延期・中止や、サプライチェーンの混乱による供給制約など間接的な影響が懸念される。
また、トランプ政権と他国・地域の関税交渉が不調だった場合の関税率引上げに伴う世界経済の減速リスク、中東・ウクライナを中心とした地政学リスクなど企業を取り巻く環境の先行き不透明感が強い中で企業は先行き慎重にみている。
2.設備投資を実施した企業の割合は、全産業で前回調査から0.1ポイント上昇
2025年4~6月に設備投資を実施した企業の割合は、全産業で26.7%と前回調査実績(26.6%)に比べ0.1ポイント上昇した。業種別にみると、製造業は同0.3ポイント低下(32.5%→32.2%)、非製造業は同0.4ポイント上昇(23.4%→23.8%)した。
なお、前年同期(2024年4~6月)と比べると、全産業は3.4ポイント低下(30.1%→26.7%)した。製造業は同3.5ポイント低下(35.7%→32.2%)、非製造業は同3.2ポイント低下(27.0%→23.8%)した。
先行き、2025年7~9月に設備投資を計画している企業の割合は、全産業で29.6%と今回調査実績に比べ2.9ポイント上昇する見通しである。
3.調査の概要
対象期間 |
2025年4~6月実績、2025年7~9月見通し |
調査企業数 |
茨城県内主要企業738先 |
回答企業数 |
348先 (製造業:121先、非製造業:227先) |
調査方法 |
郵送による記名式アンケート |
DIについて |
DI(Diffusion Index)は、前年同期と比較して「好転」・「増加」・「上昇」・「過剰」と回答する企業の割合から「悪化」・「減少」・「低下」・「不足」と回答する企業の割合を差し引いて算出している。単位は%ポイントであるが、本文中では単位を省いて表記している。 |
以 上
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